2014年7月26日土曜日

液体燃料の実用性【石油、LNG、GTLの優位性と石炭の地位】

シェルガス革命があり、北米で続々と新プラント計画が進んでいますね。個人的には、液体燃料と固形燃料、気体燃料の違いがその運用に大きな差をもたらすと考えています。私たちが普段、使う常温域は、摂氏5度くらいから35度くらいじゃないかなと思います。ただ、ある程度マイナスになっても、飛行機みたいに超高高度を飛んで、燃料が凍ると言うようなことは無いので、ケロシンのような高純度のものは通常は必要ないと考えています。

なぜ、世の中が液体燃料にこだわるかと言うと、答えは一つ「扱いやすいから」なんですよね。車のガソリンタンクにしても、石油備蓄基地にしても、LNGの基地にしても、受け入れが簡単にできますし、荷役作業もパイプを繋ぐ作業が人手が要るくらいで、あとはポンプで圧をかけてやれば、勝手に荷役ができます。これが石炭だったらどうでしょうか?大規模な保管場所と荷役設備が必要ですし、クレーンのオペレーターも必要です。また、パイプラインではなくベルトコンベアであるため、広い場所が必要です。また、燃えた後のカスを捨てる場所なども必要ですし、脱硫の設備も必要となってきます。あとは、頻繁とは言えませんが、火災が貯炭場で起きるので、その対策も必要です。それを考えると石油やLNGなどは、危険物ではあるものの、扱いやすさで言ったら、ピカイチな訳です。何と言っても、車の燃料タンクに簡単に給油できますし、流体ですので、簡単にエンジンに運ばれます。保管も容易ですね。長い年月、放置しておくと確かに水などが混じったりしますが、それでもその保管の便利さと言ったら石炭などの固形燃料に比べると遥かに大きいと言えるでしょう。

保管の便利さ以外にやっぱり気になるのは、原油の油田やガス田がある中東地区からの輸送でしょう。原油は、タンカーにそのまま積めますが、ガスはそのまま積むより、液化した方が体積が大幅に減るため、空気を運ぶと形容されるガスを運ぶ輸送よりも効果的なのです。都市ガスを使っていない地域であれば、LPGと呼ばれる液化プロパンガスも液化によって体積が大幅にへるものの一つです。LNGは液化天然ガスのことですが、マイナス162度まで圧縮して冷やすと体積が600分の1になります。冷却のために、莫大なエネルギーを消費しますが、カタールなどの大ガス産地から日本へ運ぶには、ヨーロッパやロシアにあるようなパイプラインと違い、海にも引くにも長すぎますし、多くの国を急峻な山岳地帯を経由して引くにも無理があります。従って、船舶での輸送と言うことになりますが、LNG(Liquid Natural Gas)やGTL(Gas To Liquid)などの技術が注目を浴び、実用化されている訳です。LNGは既に多くの場所で使われているため、あまり説明は必要ないと思いますが、GTLはマレーシアのビンツルでオイルメジャーのシェルが実証プラントを作り、その後は、カタールで巨大プラントが作られています。ガスから人造石油を作ると言うことで、分子構造を組み替える訳ですが、その製造過程で大量にエネルギーを消費することから、熱量換算で60%程度しか残らないということです。BTL(Bio To Liquid)やCTL(Coal To Liquid)など、他にも液化技術はありますが、ガスの液化と概念的には同じです。

一番、期待できるところとしては、石炭の液化技術ではないでしょうか。なにせ、可採年数が石油や天然ガスとは桁違いにあり、世界中に分布しているからです。日本のように、海底炭田のような採掘コストの高いところは、商業ベースにのることはなかなかないと思いますが、インドネシアやオーストラリアのように露天掘りができるところであれば、コストはべらぼうに安くなるため、原油の価格が高止まりしている今日、商業ベースが期待されるところでしょう。日本はメタンハイドレードが太平洋側にも日本海側にも多く存在していますが、燃える氷のメタンハイドレードが原因で、環境に大きな影響を与え、地震などの災害などを誘発してしまう可能性があるため、その計画には注意が必要です。

液体燃料と言う運ぶにも保存するにも効率が良いものが現在では、重宝されているわけですが、電気を保存する蓄電池の技術がより進んだり、後は水素燃料の安全性が担保されて取扱が容易になればとかいろいろ将来のエネルギー革命について考えるわけですが、それよりも熱効率という現実的な問題の方がより効率が高くなるケースが多いということも忘れてはいけません。理由は、原子力発電は、その素材の耐熱温度の関係もあり、熱の7割近くを捨てています。通常の火力発電ですと、約6割の熱を捨てています。これが、コンバインドサイクルになると4割程度に減りますが、それでも半分程度の熱を捨てているのです。車に関しても、ディーゼルエンジンは熱効率が高いものの、それでも半分の熱を捨てているのも同様で、その熱を有効利用できるのであれば、エネルギー効率は圧倒的に上がるのは言うまでもありません。

最終的には、やっぱりゼニ・カネの問題なんですよね。どう、商業ベースに乗せるかって言う。ただ、その商業ベースって言うのも、油の価格が上がれば、一気に採算に乗るようにもなります。代替燃料の開発のインセンティブが働くようにもなりますからね。金の力は、やっぱり強いです。

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