2014年7月5日土曜日

林原とは一体何であったのか?(現長瀬産業子会社)【林原健の功と罪:研究開発型企業によって多くの命が救われた】

林原が破綻したのは2011年のことです。早いもので、もう3年と言う時間が経とうとしています。超優良企業の長瀬産業が700億円で買取しましたが、これが外資の手に渡らなくて良かったと言うのが私の感想です。具体的なことは書けませんが、私はちょっと林原のことを前から知っていたこととは関係ありませんが、林原健氏の功績は、偏見なしに第三者の目から見ても素晴らしいものだったと思っているからです。一言で言うと、「目先の利益にとらわれず、中長期で研究をした」ことです。

どれだけの命が、林原のインターフェロンによって救われたのか、また安価な甘味料の供給によって、どれだけ栄養源を一般化することができたかということです。近年では、トレハロースの功績は極めて大きく、化粧品から医薬品、食料品まで、その安価な価格が私たちの生活を様々な面から支えている事実は、無視してはいけません。R&Dの投資額は桁違いですが、武田製薬のような最大手でさえ、なかなか躊躇するような分野で林原のような規模の会社が目に見える形で成果を出してきたのは極めて大きな功績だと思っていますし、遺伝子が人間と2%も違わないチンパンジーの研究などのメセナ活動にもお金を出したり、賛否両論ありますが、私は、肯定派です。オンリーワンの技術を実際に生み出していますし、今もその種は撒かれていると思います。

なぜかと言うと、林原健氏も言っていますが、目先の収益に繋がりそうなことって言うのは、いずれは、誰かが手を出すんですよね。おまけに、市場規模が100億円を超えるようなものであれば、大手企業は事業の一部として、投資をし、その周辺分野も事業に組み込むようにして相乗効果を生むように市場を創生すると。

個人的にはベンチャーキャピタルやエンジェルっていう投資家って日本には、殆ど根付いていないような気がするんですよね。日本アジア投資とか野村證券系のジャフコとかありますけど、林原のような企業に投資をしている企業ってなかなかないんじゃないかなと思っています。タカラバイオとか、オンコセラピー、そーせい、ナノキャリアとか上場している会社は、ある程度成果があがったあと、ベンチャーキャピタルが付いたり、親会社が上場したりとか言う感じだと思います。もっとアメリカみたいにリスクをとる投資家がいたら日本はもっと違っていたんじゃないかなーって思いますよ。前にも書いたんですけど、研究開発のR&D部門って、基礎研究なんか、それこそ何十年も時間がかかる。世田谷の国の機関だったと思うんですが、金属の特性を調べるところとかも、何十年曲げとか、剛性とかの試験をやってきた試験場なんですけど、素材系って、応用系と違って、特性とか見るために、それこそ年単位の時間が必要なんですよね。だって、合金で、いきなり3年後から強度が100分の1になるとかあったら困るじゃないですか。亜鉛めっきの水素脆性とか、低温脆性とかわかったのも、こういう試験場のおかげですし、基礎研究があってのものです。現代でも、原子のことがある程度わかって、特性が把握できるものの、やっぱり、こういう試験場って必要だと思うんですよね。

過去の遺構などを調べたりすることでわかることって本当に多いと思うんですよ。人間の進化の過程がひょっとすると医療面に貢献するかもしれないし、製造業などでの素材として役に立つかもしれない。世の中って意外とそういうものって多いと思うんですよ。世が世なら、結果は違ったものになっていたでしょう。特に、往時は、土地の含み益が一兆円あったということですから、東の堤義明(堤康次郎と言ったほうが適切かもしれません)、西の林原と言われる時代があったそうですから、バブルの時代がもう少し続いたり、経営判断によって土地を切り売りしていたら、今頃は違った展開になっていたかもしれません。ちょっと前までは、土地本位制が日本にはあり、銀行の担保と言えば、それは土地を指したくらいですから、戦後、ずっと右肩上がりの成長を遂げてきた日本経済が1990年以降、急激に落ち込むとは、多くの人には考えられなかったんだと思います。あと、もしIPOを途中でやっていたら違ったものになっていたんじゃないかなと思うこともあります。

研究開発、縁故採用、一族経営などのメリットなども極めて大きかったものの、林原一族の経営判断の失敗によるところも残念ながらあります。林原健氏は、自著でも述べていますが、損益計算書も、貸借対照表も見たことがないし、取締役会も開いたことすらないと述べていますが、市場が縮小し、担保価値となる土地が値下がりすれば、いままでやってきたことが立ち行かなくなります。1990年までは手放しでも結果オーライだったのでしょうが、土地がどんどん値下がりし、不良債権を処理しても処理しても先が見えない時代が1990年代でしたが、これは、収益還元法でみたり、人口動態を見れば、ある程度先が見えていました。何せ、その土地で商売をやって、商売繁盛でも、場所代を払ったら大赤字になるようだったら、その土地の価値は、割高ってことは、冷静になってみればわかることですからね。需要と供給が価格を決めるのですが、商売には、損益と言う視点が必ずあり、最終的に利益がでなかったら、すべてが水の泡になりますからね。

林原健氏の自著を読んでいて、面白いことが書いてあったのですが、「見えない世界が見える」と。これって霊視ができるってことなんだと思いますが、そのようなものまで研究対象として、実際にモルモットが妊娠すると特殊な磁場ができ、出産したときにその磁場と一致するという結果にも驚きました。ここにも書かれていないことにもおそらく色々投資をしていたと思われ、正直言って、私たちの生活にとてつもなく大きな貢献をするようなものもたくさん含まれていたと思っています。なにせ、殆ど一日中、将来の会社の食っていくネタを考えるために書籍を読み漁ったり、研究者にあったりしていたと言いますから、アラブのお金持ちが場合によっては、投資をしていたかもしれません。アルワリード王子あたりなら関心を示したと思いますw 他にも橋本龍太郎元首相から刀をもらって、錆びさせてしまったなどの逸話も書かれており、馬が合って、色々語り合う仲だったのでしょうが、錆びさせてしまったことは話せなかったでしょうw

この本を読んで思ったことは、私利私欲を考えて蓄財する経営者が多いなか、中長期の視点で、地元に貢献する肝の据わった経営者はなかなかいないなと思いましたよ。実際に 「10年、20年先を考えて研究開発を行っていく」と本人も言っていましたしね。個人的には「会社を潰すなら自分の手で」と言う言葉が頭から離れないんですけど、もうちょっとメインバンクであった中国銀行や住友信託銀行がしっかりお目付け役をしていたらこんなことにはならなかったんじゃないかなと思いましたよ。

糖化学から生化学へ転換したバイオ企業として非常に林原は名高い訳ですが、水飴とか、ブドウ糖という分野で見ると、加藤化学、三和澱粉工業、昭和産業、日本コーンスターチ、参松工業、敷島スターチ、サンエイ糖化など、ごくごく限られた会社になるんですね。

それにしても、その収益性に目をつけてJTや三菱商事、SBI、明治製菓、大塚製薬、伊藤忠商事、韓国のCJ、穀物メジャーのカーギル(林原のアメリカでの代理店であった)などが奪いあったことは、この業界に詳しい人間で、きちんとデューデリジェンスできる人間だったら、わかりきったことでした。それくらい価値があったんですよね。製薬大手なんかは、海外の会社を買収するのに数千億を投資するんだったら、林原は1000億以下だったんですから、なぜ手を出さなかったのかなと思うほどですよ。西村あさひ法律事務所や東急リバプルなどハイエナのように出てきて、おいしいところをかっさらって言ったと言う人も居ますが、確かに不透明なところがたくさんありましたね。中国銀行や住友信託銀行も追い担保して、勝手にADRをしようとしてましたしw

それにしても、長瀬産業なんかは、現金の塊のような会社ですから、きちんとその現金を投資しておかないと自分のところが買収されてしまうおそれがありますから、良い投資だったと思いますよ。正直言って、林原健氏みたいな経営者が社長の座に居なくなってしまったのは非常に残念なことですが、長瀬一族の経営手腕は素晴らしいものがあるので、今後、どうなるのか見守りたいです。

あと、ふと思い出したのは、ADRの発表時に、即座に契約条項を盾に材料の納入をストップした業者があった一方、病院などで困る患者がいるんじゃないかという人道的な立場、そして何十年も儲けさせてもらったのだからと取引を継続する会社があったのも事実です。

本当に、林原家に対しての信頼と実績を評価してのことだと思いますけど、林原家は私財を投げ売ったのですが、それを買って、無償で林原健氏へ貸している方がいらっしゃったことです。やっぱり、誰か必ず見ているんだなと思いました。林原健氏は、散財の王道である「飲む、打つ、買う」ではなく、目的が研究開発のための費用を捻出するための粉飾決算であり、自著で述べているように本当に経営に関心が無く、財務諸表も見ていなかったんだなと改めて思いましたよ。過去に、日本経済新聞の私の履歴書にも掲載されていましたが、また、読みたいな。

最後にまとめとして、何が問題であったのかというと、下記に集約されると思います。

1)内部統制の欠如
2)メインバンク、準メインバンクであった中国銀行と住友信託銀行の怠慢
3)含み益に頼りすぎており、実態を把握していなかった

これさえなければ、正直、その功績は極めて大きかったと思っています。メセナ活動も、大手企業が行っているものに比べたらかわいいもんですからね。比率で言うと、結構大きかったかもしれませんが・・・・。


林原家 同族経営への警鐘
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4822263991/ref=pd_lpo_sbs_dp_ss_1?pf_rd_p=466449256&pf_rd_s=lpo-top-stripe&pf_rd_t=201&pf_rd_i=4898314090&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_r=1GB1SJY6MXJXFYSD010Y

破綻──バイオ企業・林原の真実 [単行本]
http://www.amazon.co.jp/%E7%A0%B4%E7%B6%BB%E2%94%80%E2%94%80%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E4%BC%81%E6%A5%AD%E3%83%BB%E6%9E%97%E5%8E%9F%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F-%E6%9E%97%E5%8E%9F-%E9%9D%96/dp/4898314090

○他の参考ブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/sukoyakana888/770672.html

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